
“このへんな生きものは、まだ日本にいるのです。たぶん。”
都会からそんなに遠くない田舎町に引っ越してきたサツキとメイ。お化けやしきみたいに古い家には、何かが棲んでいる気配がいっぱい。サツキたちの家の裏にある神社の大木をすみかにしているトトロ。人の住んでいない家をススやホコリだらけにしてしまうススワタリ(まっくろくろすけ)。大きな目と大きな口、そして何本もある足で空間を自由自在に走りまわる巨大なネコバス。サツキとメイは次々に奇妙ないきものと出会い、ステキな冒険に飛び出す。
テレビで観た。何回目かも覚えていない。金曜ロードショーでやるたびに、なんとなくチャンネルを合わせてしまう。別に「観よう」と意気込むわけでもなく、気づいたら観ている。そういう映画だ。
子供の頃は、ただトトロが出てくるのを待っていた。バス停でトトロが隣に立つ場面、猫バスが走る場面、それだけで満足だった。話の内容なんて正直どうでもよかった。トトロがかわいい、猫バスがかっこいい、それで十分だった。
大人になって観返すと、全然違うものが見える。あの映画、母親が入院しているのだ。引っ越してきた理由も、父親がどこか無理して明るく振る舞っているのも、全部そこに繋がっている。サツキが台所に立って弁当を作っている場面。小学生の女の子が、妹の世話をしながら家事をしている。あれを「しっかり者のお姉ちゃん」と見るのは子供の目線で、大人が観ると胸が苦しくなる。あの子は頑張りすぎている。
メイが迷子になった時、サツキが走り回って泣くシーン。あそこで初めて、サツキの中に溜まっていたものが全部溢れ出る。「お母さんが死んじゃったらどうしよう」という本音が出る。あの一言で、それまでの明るい冒険映画の下に流れていた不安が、一気に表に出てくる。子供の頃はあのシーンの意味が分からなかった。今は分かりすぎて辛い。
でもこの映画が凄いのは、その重さを重さのまま放り出さないところだ。猫バスが来て、メイが見つかって、トウモロコシが病室の窓辺に置かれる。それだけ。大げさな解決はない。でもあれでいいのだ。あの一本のトウモロコシが、「大丈夫だよ」という子供たちの精一杯の言葉になっている。
何回観ても飽きない理由が、最近やっと分かった気がする。この映画は、観るたびにこっちが変わっている。子供の時は冒険映画で、親になったら親の映画になる。同じ映画なのに、毎回違うものが刺さる。そういう作品は、本当に数えるほどしかない。
坂本千夏
Mei Kusakabe (voice)
監督
脚本
宮崎駿
音楽
久石譲
上映時間
1時間26分
ステータス
Released
公開日
1988-04-16
日本公開日
1988-04-16
予算
約5.5億円($4M)
興行収入
約61.5億円($41M)
製作国
日本
制作会社
Studio Ghibli, Nibariki, Tokuma Shoten