
A・タルコフスキーの作品は様々な映像の断片がコラージュされたようなものばかりである。この「鏡」もまたそうであり、彼の自伝的要素を持つというが、解るような解らないような……。でもその数々の映像はどれもこれもかっこ良く、戦争の記録フィルムらしきものも出てくる。物語などの存在は忘れてただひたすら映像の中で泳ぐような感覚で、なんとも美しい一本だ。
見始めたら最後、もう止まらなかった。気づけば全シーズンを一気に駆け抜けていた。こんな体験は、なかなかできるものではない。
冴えない高校の化学教師が、余命宣告をきっかけにメスの製造に手を染めていく。この設定が恐ろしいほどリアルだ。誰だって、もし明日死ぬと知ったら、今まで飲み込んできた本音や、押し殺してきた野心が溢れ出すかもしれない。ウォルター・ホワイトの変貌は、どこか他人事とは思えない生々しさがある。
平凡な中年男が、家族のために、そしていつしか自分自身のために、裏社会の帝王へと変わっていく。それはまるで、日々の生活に埋もれたすべての夢を爆発させるかのようだ。最初は同情し、やがて応援し、そしていつの間にか恐ろしくなる。その感情の変化こそが、このドラマの真骨頂だった。
純粋なエンターテインメントとして、これほどのドラマは他に見たことがない。ウォルター、ジェシー、ハンク、ガス、マイク。登場人物の一人ひとりがあまりにも強烈で、全員がスクリーンに焼きつくアイコンになっている。こんなことは、普通のドラマではまず起きない。
そして何より、この物語には「もしも」のリアリティがある。もし自分が余命を宣告されたら。もし自分に隠れた才能があったら。もし一線を越えてしまったら。その「もしも」が絵空事ではなく、本当に起こり得ることとして迫ってくるから、画面から目が離せなくなる。
間違いなく名作だ。一話目を見たら最後、全部見届けるまで止められない。そういう作品だった。
Игнат Данильцев
Ignat / Alexei - 12 Years Old
脚本
Александр Мишарин, Андрей Тарковский
音楽
Эдуард Артемьев
上映時間
1時間47分
ステータス
Released
公開日
1975-03-07
予算
約1.2億円($825K)
興行収入
約0.2億円($124K)
製作国
Soviet Union
制作会社
Mosfilm